2011年6月27日月曜日

第2回研究会「近代を拓いたいくつかの概念―芸術・文化・歴史」概要

622日(水)に第2回研究会「近代を拓いたいくつかの概念―芸術・文化・歴史」(スピーカー:松宮秀治氏)を開催しました。松宮氏には、現在執筆中の「歴史」「文化」に関する著書の構想に触れる形で、主として西欧における「歴史」概念の成立過程についてお話し頂きました。概念史の重要性に始まり、カントの進歩思想、聖書の原典批判を経て、普遍史の誕生の中に、伝統社会からの脱却としての近代概念の誕生及び近代的歴史観の生成過程を見る、というのがメインの主題でしたが、主題以外にも、名前に対する東西の感覚の相違、一国史観の陥穽、学問の専門性のあり方、そして、鴨長明の奥さんの日記、エカテリーナ女王の楽しみに読んでいた雑誌、ヘーゲル『歴史哲学講義』の翻訳者等々…と話題は多岐にわたりました。続くディスカッションでは、芸術のどの部分が西欧近代の構築物なのか、芸術の自律性とは何か、芸術の自己破壊は何によるものであるのか、また、「芸術」の座の空位となった現代社会において何がそこを占めるべきなのか(或は空位のままでよいのか)といったトピカルな問題にも及び、延長しての二時間半となりました。ライブの松宮氏は著書に劣らぬ博覧強記ぶりを発揮され、留まることを知らぬ知識の奔流にのみ込まれるままに、司会進行におきまして至らぬ点が多くありましたこと、ご容赦頂ければ幸いです。松宮氏は自著で、日本には「ドン・キホーテ」型の人物がいないと述べていましたが(松宮2008, 36)、今回は「ドン・キホーテ」のように「西欧近代」に自ら立ち向かい格闘する氏の姿に接したように思います。

2011年6月7日火曜日

第2回研究会のお知らせ


一橋大学大学院社会学研究科市民社会研究教育センター
文化政策研究会 セミナーシリーズ
2011
年度テーマ:文化政策の前提を問う

2回「近代を拓いたいくつかの概念芸術・文化・歴史」
ゲストスピーカー:松宮秀治氏(『芸術崇拝の思想』『ミュージアムの思想』白水社)

日時:622日(水)17:3019:30
場所:一橋大学国立キャンパス(東キャンパス)マーキュリータワー43406

近代ヨーロッパにおける「芸術」とは、単に美的なるものの探求の到達点としてあるのではない。それは、美に関する特権的な権威とそれを再生産する諸制度を携えた社会装置の総称でもある。そのような「芸術」は、ヨーロッパ近代を通じての歴史的文脈の中で発達してきたものであり、また今日においては、衰退しつつあるものである。

上記の認識は、文化政策において「芸術」を取り扱う際にも、本来、前提とされるべきものである。だが日本の文化政策の文脈においては、そのようなヨーロッパにおける「芸術」のもつ社会性・歴史性は捨象されたまま、「芸術」はよきものであるという一種の絶対的な概念として、無前提に認められ(或は黙認され)てきたきらいがある。

第2回文化政策研究会では、松宮秀治さんを迎えて、近代ヨーロッパに成立し、そして現在解体しつつある「芸術」概念の、社会性・歴史性がいかなるものであったかを把握する作業をおこなう。その作業を通じて、従来の日本の文化政策における「芸術」概念の取り扱いに対して省察を加えるとともに、現在進行しつつある、「芸術」の解体過程が、ヨーロッパおよび日本の文化政策にとって、それぞれどのような意義を有するものであるのかを検証したい。

一橋大学大学院社会学研究科市民社会研究教育センター
プロジェクト・ディレクター
青野智子

参加申し込みは、下記のメールアドレスまで。
culturalpolicysg
atgmail.com((at)を@に変えてお送り下さい)